南半球の高校に単身留学している人の大学受験についてvol.4 ―帰国生大学入試についてvol.51―

(2011年11月15日 18:25)

こんにちは。SOLの余語です。
前回は、オーストラリアやニュージーランドの高校に単身で留学している人にとって、学問的な英語を読み書きする能力を習得するための学習をした経験を持つ大人が身近にいないことから、英語運用能力を向上させる必要性を感じることが難しいということを述べました。実際、英語圏の高校に通っていたにもかかわらず、英語運用能力を十分に向上させることができない人が南半球の国々への単身留学生の中には多くいます。

日本の大学の帰国生入試が、英語を読み書きする力が高くなくても十分に対応できるものであれば、前回までの記事で述べた状況はそれほど大きな問題にはならないかもしれません。この点、インターネットなどで帰国生入試の情報を調べてみると、帰国生入試は一般入試よりも問題の内容が簡単であり、競争も緩やかなものであると述べているものが目に付きますし、大手予備校が発行している受験情報誌にもこのような傾向があるということが書かれているものがあります。

確かに、関西圏の大学(京都大学などの一部の国立大学は除く)やその他の地方にある大学では帰国生入試の競争は緩和されていますし、求められている学力も高いものではないことは入試データなどを見る限り明らかです。しかし、首都圏の国立大学や有名私立大学の帰国生入試で合格という結果を得るには、厳しい競争を勝ち抜くだけの高い英語運用能力が必要になっています(これに加えて、小論文試験に対応するための日本語の読解力や論述力も求められていますが、話が複雑になりますので、今回の記事は英語運用能力に限定して話を進めます)。

例えば、入試における英語試験の出来が合否に大きな影響を与えるものとしては、早稲田大学の帰国生入試を挙げることができますが、例年、TOEFL iBTのReadingとWritingのスコアを合わせたものがコンスタントに55点以上ある状態でないと、教育学部、人間科学部、社会科学部、スポーツ科学部、国際教養学部を除いた文系の各学部では合格することが望めません(ただし、今年は、英語試験が例年に比べて簡単で、競争も緩やかなものであったため、小論文試験でしっかりとした文章を書け、国語試験でも受験者の平均以上の得点を取れた人は、2つのセクションの合計がコンスタントに46点以上であれば合格しています)。また、立教大学の帰国生入試の英語試験は難しいものではありませんが、その出来で合否が決まってしまう経営学部では、TOEFL iBTで80点TOEICで850点を取れるような、簡単な問題を取りこぼしなく解くことができるレベルの英語運用能力が必要になります。

この他にも、英語試験がなく、その代わりにTOEFL iBTやTOEICのスコアを提出するICUの4月入学者を対象とした入試では、TOEFL iBTで100点以上を取っておくことが必要になるのが一般的ですし、これらの英語運用能力検定試験で一定のスコアを取得しておけば、英語試験が免除される中央大学の商学部でも、TOEFL iBTのスコアが80点以上でない場合には、英語試験を免除されなかった人に逆転されてしまう可能性が残ります。

このように、首都圏の有名大学に限定して言えば、帰国生入試で合格するためには、アカデミックなレベルで英語の文章を読み書きできる能力が必要条件の一つとなっていますが、そこで求められる学力は今後一層高いものになるかもしれません。次回は、そのような予測をする理由を説明したいと思います。

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