こんにちは。SOLの余語です。
前回は、来年以降に帰国子女枠大学受験を予定している人向けに、英語運用能力とはどのようなもので、それを伸長させるにはどれぐらいの期間がかかるのかという観点から、英語学習の必要性を説明しました。今回はそれとは異なる観点から、現在海外に滞在している人にとって英語を学習することがいかに大切なのかということを説明したいと思います。
帰国子女枠入試やAO入試では、ほとんどの大学で小論文課題が出題されます。その内容はたいてい、大学側が18、19歳の人であれば理解できるであろうと考える社会問題や社会・人文科学に関する問題についての文章を読み、その問題や文章中の筆者の主張に対する自分の考えを述べるものです。また、英語試験でも、社会問題や学問的な命題に関するエッセイ課題や読解問題が出題されることが多くあります
このような問題に対応するには、社会問題や社会・人文科学に関する知識がもちろん重要になりますが、それに加えて年齢相応の論理的に思考する能力が必要です。そして、多くの人にとっては、学校が知識を増やしたり、思考力を伸ばしたりするよい機会を提供してくれる場となります。
例えば、自分ひとりで本を読むことでも知識などは得ることができますが、自分の好みや理解力に合ったものを選んでしまいがちです。また、家庭でも社会問題や学問的な事柄を話す機会はそれほどないでしょう。この点、学校の授業では、受験に必要な知識を自分の好みなどに関係なく得ることができます。また、海外の学校ではよく見られる授業中の発表やディスカッションだけでなく、自分に刺激を与えてくれる人間関係を形成することを通して、ある一つの社会問題や学問的な命題に様々な立場があることを知ることができ、思考の幅を年齢相応なレベルにまで広げることが可能になります。これらのことが思考力を伸ばすことにつながるのです。
また、僕は今まである帰国子女教育機関で大学受験生の授業などを担当するのと同時に、小学生や中学生の日本語作文通信添削を担当してきました。その中で、小学6年生の前後で海外に行き、英語の学習を体系的に行ってこなかったために、学校で受講できる授業やそこで形成できる人間関係に制限があった中学3年生の作文を添削指導する機会が多くありました。
このようなバックグランドを持つ生徒の多くは、「日本と滞在国の違い」を論じるよう言われても、目に見える違い(例えば、道路や住居の広さ)を指摘するだけで作文が終わってしまいます。さらに、こちらから作文で指摘した違いが生じる背景など、中学3年生に見合った抽象度のあることを考えるように様々な形で促しても、先に挙げたものとは異なる目に見える違い(体や車両の大きさの違いなど)しか考えに浮かばないことも多々ありました。
小学4年から高校3年までの時期は人生の中で最も思考力が成長する時期ですが、このような事実を見ると、それは学校という場で適切な刺激が与えられた場合にのみ実際のものとなるということも分かります。そして、思考力が年齢相応なものに成長している場合にのみ、授業などで与えられる知識の習得も順調に進んでいきます。
しっかりとした英語運用能力を身につけることは、英語圏の現地校や国際校での学校生活を充実したものにすることにつながります。精神的な部分で大きく成長できる、せっかくの機会を逃さないために、受験学年以前の人も英語を体系的に学習する機会を持つようにしてください。
英語学習の必要性に関する説明は今回で終わりです。次回からは、どのような方針で学習を進めるのかということについて述べたいと思います。なお、今回説明したことで質問などがありましたら、こちらより連絡してください。